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リアルオプションとITビジネス
加藤 敦 著


A5判 242 頁
\4,800


リアルオプションは金融オプションを実社会の様々な課題に応用した新鋭の経営ツールであり、不確実性下での高度な意思決定を可能とするものである。本書はビジネス社会においてリアルオプション・アプローチを実践する手助けとなることを目的とし、次の読者層を念頭に企画されたものである。第1にリアルオプションの原理は学んだがまだ実践には至っていない方に対し、マネジメント上の要点を明らかにし、具体的なケーススタディを通じテンプレート(ひな型)を提示することで、実践の後押しをしたいと考えている。第2に ビジネスに携わる方に対し、当該分野における様々な意思決定問題に適用することで、いかに豊かなソリューションがもたらされか,その限りない可能性を知って欲しいと考える。

本書は大きく前半の基礎理論編と後半のケーススタディ編から成り立っている。

基礎理論編ではリアルオプション実践に向けてのマネジメント上の要点について整理する。一般企業にリアルオプションがそれほど浸透しなかった背景には,オプション的思考そのものに馴染みがないことに加え,モデル・ビルディングの曖昧性,価値評価にあたって説明責任の問題,実行管理の難しさなどが挙げられる。こうした問題に対処する第一歩はオプション推進にあたって必要となる,マネジメント上の要求事項を体系的に整理し内容の定義をすることである。これがオプション・プロトコルで,金融オプションの約定事項に相当する論理スキーム並びに論理スキームを実務上推進するためのマメネジメント上の枠組みである統御スキームからなる。またその両者を結びつけるものとして価値測定プロセスがある。我々は基礎理論編において,オプション・プロトコル並びにその具現化策について考察する。では基礎理論編の構成について概観しよう。第1章「リスクとオプション」,第2章「リアルオプション:金融市場を飛び出した経営戦略」はリアルオプションの概説部分である。次に第3章は理論的考察の中心となる部分で「リアルオプション・プロトコル」について論ずる。以下の章はリアルオプション・プロトコルを具現化するためのポイントを検討したものである。第4章から第6章にかけては ビジネスに適用可能な主要テーマについて「投資」,「企業価値」,「スイッチング・オプション」に分け,論理スキームをどう構築すべきか検討する。第7章では「価格測定プロセスの可視化」について考察し,第8章は「統御スキームと」について述べる。

ケーススタディ編では ビジネスにおける課題に対して,実務家が共有できるテンプレート(ひな型)となることを願い,リアルオプション・アプローチがもたらす豊かなソリューションを具体的に提示する。ここでは論理スキームのみでなく統御スキームをどう構築し,価値評価プロセスにどう創意をこらすか,実務家の視座にたって考えぬく。具体的には,インフラ投資(拡張オプション),企業価値評価(拡張オプション),セキュリティ投資(廃棄オプション),ラーニング(タイミング・オプション),アウトソーシング(スイッチング・オプション),システム開発(スイッチング・オプション)について検討する。事例は特定企業をモデルにしたものでなく複数の事例を参考に創作したものである。

本書がビジネスを対象にした表向きの理由は私自身が実務家として関わりあってきたからだが,本当の理由は,ビジネスが成長途上で大きな不確実性並びに機会・脅威に富み,リアルオプションを通じた豊かなソリューションの可能性が広がっているからである。また ビジネスはソリューションを提供する産業であり,システムエンンジニアやコンサルタントは先進的な経営手法の習得・実践に意欲的である。さらにモジュールやプラットフォームなどビジネスで生まれたマネジメント上の概念が他産業にも広がっている。このように ビジネスにおけるリアルオプションは,当該産業にとどまらない豊かな可能性を感じさせてくれるのである。

                         「序文」より