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産業組織論
小樽商科大学教授 鵜澤 秀 著

A5判 232頁
¥3,780


 自動車、ピアノ、カラーテレビ、半導体、国内航空、ウイスキー、ビール、板ガラス、カラーフィルムなど、日本の多くの産業は少数の企業で構成されている。

 他方、数多くの建設業、美容業、喫茶店、ラーメン店、コンビニエンス・ストアがある。石油元売り会社は少数でもガソリンスタンドの数は約5万もあり、価格競争を何度も繰り返している。

 また、コカコーラとペプシはアメリカではほとんど同じマーケットシェア(市場占有率)なのに、日本ではコカコーラがペプシを大きくリードしている。

 北海道電力を含め、国内10電力会社は地域独占を認められている。水道、ガスは公益事業である。

 宝くじの販売は他の銀行も引き受け可能なのに、第一勧業銀行が実質的に独占している。

 何故このような状態になっているのか?

 本書の目的は、上に述べたような産業組織の諸問題についてミクロ経済学の観点から分析するための分析手法を提供することである。

 独占や寡占はどのような経済的帰結をもたらすか。また、望ましい産業組織のあり方、効率的な経済効果を達成するためには、どのような市場条件が満たされる必要があるかを検討する。

 現実の経済を分析するための基礎的な分析用具に習熟してもらい,日本経済だけではなく,世界経済にも関心を寄せてくれることを最大の目的としている。




本書の特徴

 本書では、ほとんどのテーマについて、簡単なモデルを使用し、図表や数値例を多く利用しながら、わかりやすい説明がなされている。しかも、大部分の図表はモデルの基礎的なパラメータの具体的な数値に基づき、コンピュータ・ソフト(著者作成のプログラム、マイクロソフトのエクセル、ウォルフラム・リサーチの MATHEMATICA など)を用いて作成されたものである。

 日本の産業構造を素描した後で、まず、独占企業の行動とその経済的成果を分析する。

 次に、それぞれの企業の行動が相互依存関係にある複占企業の分析をおこなう。さらに、企業間の戦略的行動とその成果を相互依存関係を明示的に考慮できるゲーム論を用いて分析する。また,既存企業の行う製品差別化や参入阻止とその意義を明らかにする。

 最後に、規制(緩和または改革)の意義についても述べる。

 本書では、理論的産業組織論が述べられている。理論的産業組織論は、現代の産業組織の特徴を明らかにするための一つのアプローチとして応用ミクロ経済学から出発した理論である。本書で用いられたコンピュータ利用の資料は著者のインターネットサイトから入手できる。




本書の構成と内容

 本書の構成と内容を示す目次を次に掲げよう。

第0章イントロダクション
  産業組織論はどのような内容を扱うか
  集中度、ローレンツ曲線、ジニ係数
  独占企業の行動
  寡占企業の行動
  ゲーム論によるアプローチ
  規制(緩和)とその影響について

第1章 市場構造ー市場行動ー市場成果パラダイム
  市場構造(market Structure)を決めるもの
  市場行動(market Conduct)
  市場成果(market Performance)

第2章市場集中度を測る
  産業の定義
  産業の特徴と指標
  マーケット・シェア(市場占有率)
  集中度とハーフィンダール指数
  ローレンツ曲線とジニ係数

第3章 マーケット・シェアの例
  自動車産業
  ビール産業
  世界半導体産業

第4章 独占企業の行動
  需要関数と需要曲線(逆需要関数)
  需要曲線と限界収入曲線
  需要の価格弾力性
  需要関数の例
  費用関数と限界費用曲線
  利潤と利潤最大化の条件
  (MR=MC、MR曲線の傾き<MC曲線の傾き)
  利潤最大化の図解、計算、および言葉による説明
  ラーナーの独占度

第5章 厚生水準を測る
  消費者余剰
  生産者余剰
  総余剰と死荷重損失(dead-weight loss)
  余剰を図解で説明
  死荷重損失の計算例

第6章 寡占企業の理論(1)
  3つのレストランが半額ディナーを提供するフリードマンの例
  クールノーの複占(duopoly)モデル
  反応関数と反応曲線
  クールノー=ナッシュ均衡
  図解によるクールノー=ナッシュ均衡の求め方
  等利潤線
  クールノー=ナッシュ均衡はパレート効率的でない配分である

第7章 寡占企業の理論(2)
  先導者と追随者
  シュタッケルベルクの複占モデル
  シュタッケルベルク均衡
  シュタッケルベルク均衡とクールノー=ナッシュ均衡を比較する

第8章 寡占企業の理論(3)
  ゲームの理論によるアプローチ
  2つの企業が協力する可能性
  協力均衡は遵守されるか
  企業の長期戦略は協力をもたらすか
  無限回繰り返しゲームとフォーク定理

第9章 寡占企業の理論(4)
  企業の戦略変数は数量だけか
  ベルトランの価格競争モデル
  価格に関する反応関数(反応曲線)
  ベルトラン=ナッシュ均衡
  数値例

第10章 寡占企業の理論(5)
  生産能力の制約を考慮する
  エッジワースの複占モデル---価格循環モデル
  数値例
  レビタン=シュービックの定式化
  均衡価格は存在しない

第11章 製品差別化と競争
  製品差別化を考える
  水平的製品差別化と垂直的製品差別化
  ホテリングの立地モデル
  ベルトラン=ナッシュ均衡
  ティロールによる議論

第12章 参入阻止価格理論について
  既存企業と参入(予定)企業の戦略
  ベインの理論
  シロス-ラビーニの参入阻止価格論
  数値例

第13章 戦略的企業行動と参入問題
  ディキシットの参入障壁理論
  サンク・コストとコミットメント
  戦略的参入阻止
  数値例

第14章 規制とその意義
  家賃規制の経済的効果
  自然独占のケース
  規模の経済
  平均費用逓減
  限界費用価格付け(Marginal Cost Pricing)
  平均費用価格付け(Average Cost Pricing)
  二部料金制

第15章 報酬率規制下の企業行動
  公正報酬率規制
  アバーチ・ジョンソン効果
  数値例
  公正報酬率規制の限界
  インセンティブ・レギュレーション

第16章 プライス・キャップ規制の得失
  プライス・キャップ規制
  「プライス・キャップ規制」による料金規制の利点
  「プライス・キャップ規制」による料金規制の問題点
  「ラムゼー価格」
  数値例