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グリーン 計量経済分析 I・II(全2巻)
William H. Greene著

A5判 全1,328頁
¥25,200
+CD-ROM 函入りセット(分売不可)


本書は、経済学部高学年・大学院での初級計量経済学の授業で学ぶに最適な計量経済学の本格的入門書である。1993年に原著初版が出版されて以来ずっと、本書の原著は世界各国で最もポピュラーな教科書であり続けている。本書は1999年後半に出版されたばかりの原著第4版の最新版に基づく訳書である。本書が「本格的」であるのは、次の三点にある:

1. 実証を志す者にとって十分な行列代数、確率統計などが自己完結的(他に参考書を準備しなくてよい)に紹介してある点。

2. 最尤法や漸近理論などに特に多くのページを割くことで、計量理論についての基礎力を読者に身に付けさせようとしている点。

3. 単位根・共和分、GMM、ARCH-GARCH など多くの最近の話題を基礎理論から最近の実証分析まで扱っている点である。

かと言って本書は、理論的過ぎるわけではない:

1. 随所に専門誌に掲載された実証例がデータと共に説明されている。

2. 日本語版は計量経済分析用ソフトLIMDEP7.0フル機能版(日本語マニュアル)がデータと共にCD-ROMで提供されるので、本書に書いてあることを読後すぐに確かめられる。LIMDEP は質的選択モデルや制限従属変数モデルの分析には定評がある計量経済分析ソフトウェアである。

本書が他のどんな本よりも優れている点は:

バランスがとれた計量経済学の本格的入門書

多くの最新の話題を丁寧に扱っている

計量・統計理論をいい加減にしていないので、発展性がある(つまり、本書で得た基礎力は新しい手法に出くわしても、有用である)ことである。




本書のねらいと改訂4 版

原書 W. H. Greene の Econometric Analysis は 現在、米国の学部上級・大学院において計量経済学・数量分析のための教科書として、最も広く使われているものである。また経済学や社会学、政治科学など社会科学系だけでなく医療分析、交通工学、環境科学などでも教育や実務現場で広い支持を受けている。このように教科書先進国のアメリカでも、この本の定評は確立されている。日本では、大学院レベルの計量経済学の教科書として適当な水準とカバレッジのものは、残念ながら見あたらない。本訳書の出版は、このギャップを埋めるべく、長らく待たれていたものである。

この第4版は、1993 年の初版出版以来の定評ある「計量経済学の最先端までの展望」という体裁を保持しつつ、しかも初心者にも十分に理解できるよう配慮された系統だった説明と豊富な数値例・実証例で、極めて満足の行く内容となっている。計量経済学の展望で最も権威あるのは Elsevier 社から 15 年以上かけて順次出版されている「Handbook of Econometrics」シリーズであるが初心者には大部な上、高度過ぎるし最新の成果を含めた出版までには何年もかかっている。その点、本書は初版以来、常に新しい成果を初心者にも理解できるスタイルで提示することを念頭に書かれている。また、一人の著者が書いているので小回りがきき、最先端の計量理論も取捨選択の上、適切に取り込んでいる。それ故、本書は up-to-date な計量分析手法とその考え方を理解しようとする学生、専門家、研究者そして実務に携わる社会人にとって座右に置くべき最適な入門書、参考書そして計量分析の辞典であろう。特に実際に手法を試そうという向きには、実証例・数値例ともに豊富な上に、分析用のデータとソフトとして原著者のグリーン教授が開発して計量経済分析ソフトウェアとして定評のあるLIMDEP 7.0 [機能限定版]までも提供されているのは、日本語の本では類を見ない。なお原書は、特に改訂4版になり、大幅な加筆箇所が多いためかマイナーな誤りや誤植が多くなった。本書では、これ等の原書に散見される誤りや誤植を可能な限り、断り無く訂正した。ただし日本語のみからでは、解釈に困難を来す恐れがある場合に限り、訳注を付け簡単な説明をした。これらは、「原書に対する本書の大きな付加価値となるであろう。

本書、改訂4版で(旧3版に比べて)新しくなった主な点は次の通りである:

経済学、ファイナンスや政治科学等に幅広く題材を求めて、その結果現実的な例が増加し、また既存の例も改訂・拡張が行われた。

9章には、新規に追加された漸近理論の包括的説明と古典的回帰モデルにおいてOLS に代わる各種推定法の紹介がある。

3版までの章とは見違える程に書き直された 17, 18章には、時系列解析の通常の話題の他、このレベルの本では珍しく周波数領域の説明や長期記憶時系列など最新の計量時系列解析の話題も入っている。

新たに非線形モデルに重点が置かれ特に10章における、その扱いの深度は増していること。

最も画期的な改善点は、LIMDEP (CD-ROM) が添付された点であって、著者 Greene が開発した計量経済分析ソフトとして定評のあるLIMDEP が本書学習者用限定版として添付の CD-ROM に収められている。また CD-ROM には、本書で使用されている全てのデータがLIMDEP 以外のソフトでも読み込める様にExcel , Gauss その他用の各種フォーマットで収録されている。




本書の内容

1章 計量経済学と本書の計画: 計量経済学の定義、モデル作成の実際、計量経済学の理論と応用計量経済学、本書のアウトライン、計量分析に使うデータとソフトウェアの説明。

2章 行列代数を扱うこの章は、よくある経済数学における線形代数の解説書でなく、計量経済学で必要な行列代数」の必要十分な説明になっている。:行列の定義・簡単な算法、巾等行列;行列の幾何(線型従属性、ランク、線型方程式体系の解);分割行列、クロネッカー積;特性根と特性ベクトル;定符号行列;行列の微分と最適化。

3章 計量経済学で使われる確率モデルの説明: 確率変数と確率分布、期待値;連続分布(正規、カイ二乗、t、F 、対数正規、ガンマ・指数、ベータ、ロジスティック);離散確率変数;同時分布(周辺分布、期待値・共分散・相関);二変量分布と条件付け(回帰 - 条件付期待値、条件付分散);多変量分布と積率;多変量正規分布。

4章 統計的推測を扱うこの章では推定論、検定論などを計量経済学で必要な範囲において説明している:無作為標本抽出、記述統計;点推定(効率的不偏推定);大標本分布理論(確率収束、分布収束、漸近分布、デルタ法、漸近的期待値、級数のオーダー);最尤法;積率法;区間推定;仮説検定(WT, LRT, LMT)。

5章 計量手法における計算と最適化を扱うこの章では、最新の数値計算の手法と最適化手法が説明される。乱数生成、モンテ・カルロ法、ブートストラップ、ギブス・サンプラー他。この章は、他の計量経済学の教科書には見られないトピックスを扱っており、本書の特徴の一つである。

6章 本章は重回帰モデルの仮定と OLS 推定量の代数的・統計的性質を扱う:古典的線形回帰モデルの仮定;最小二乗解の代数的性質、分割回帰;適合度と分散分析;最小二乗推定量の統計的性質;多重共線性;観察値の欠落;回帰診断と影響観察点。

7章 本章では回帰モデルにおける線形制約の検定、特にチャウ検定などの構造変化の諸モデルと検定を扱う。また各種の非入れ子型検定も紹介される。最後に予測の問題を取り上げる:制約の検定(仮説検定への二つの接近法、複数の線形制約の検定、単一線形制約の検定、J個の線形制約の検定、信頼区間に基づく検定、非正規誤差項);制約付最小二乗推定量;適合度減少に基づく検定;構造変化の検定(パラメーター・ベクトルの変化、定数項の変化、部分係数の変化、観察値の数が不十分な場合);異分散下の構造変化の検定;その他のモデル安定性の検定;非線形制約の検定;非入れ子型モデル包括(Encompassing モデル、J検定、Cox 検定、モデル選択の基準);予測(予測に便利な計算方法、予測の精度を測る)。

8章 関数形に関わる諸問題、非線形性と各種定式化を検討する:ダミー変数(二値変数、複数のカテゴリー、境界効果、スプライン回帰);非線形性;変数の選択、変数の欠落、過剰な変数;偏りのある推定量と予備検定推定量(平均平方誤差の検定、予備検定推定量、不等式制約)。

9章 OLS 推定量の漸近理論、操作変数と測定誤差、WT, LRT, LMT、最小絶対誤差推定、ベイズ推定等が扱われる:最小二乗推定量の有限標本特性と漸近的性質(一致性、漸近正規性、s^2の一致性と Asy.Var bの推定量、bの関数の漸近分布、検定量の漸近的性質);確率的説明変数;操作変数法、観測誤差、代理変数、Hausman 特定化検定と操作変数法推定への応用;漸近的効率性、WT, LRT, LMT の原理と線形モデル・線形制約;非正規的誤差項(確率的フロンティア・モデル、正規性の検定);最小絶対偏差推定とベイズ推定。

10章 この章では非線形回帰モデルの統計的推測一般が扱われる。例として Box-Cox 変換が説明される:非線形回帰モデルの線形化回帰、非線形最小二乗推定量;最尤法と非線形最小二乗推定、非線形操作変数法推定、二段階非線形最小二乗推定;仮説検定; Box-Cox 変換(独立変数の変換、モデルの変換、(対数)線形性の検定、LMT)。

11章 非球面分布誤差項 Nonsperical Disturbances の場合、一般化最小二乗法(GLS と FGLS)が有用である。GMM の推定と検定も本章で扱われる:非球面分布誤差項と最小二乗推定の帰結(OLS の有限標本特性・漸近特性、非線形 LS の漸近特性、操作変数 IV 法の漸近特性、漸近共分散行列の頑健推定);一般化最小二乗法 GLS と最尤推定;実行可能な一般化最小二乗法 FGLS と最尤推定;GMM 推定量(非最適な加重行列、積率制約の妥当性の検定、疑似最尤推定と頑健漸近共分散行列)、GMM の枠組における仮説検定( WT, LMT と LRT、条件付積率検定)。

12章 本章では誤差項に不均一分散があるときの検定と推定を扱う: OLS の非効率性、漸近共分散行列の推定;検定(White の検定、Goldfeld-Quandt 検定、Breusch-Pagan/Godfrey 検定、グループ間の分散不均一性の検定);GLS と FGLS(二段階推定、最尤推定、尤度に基づいた不均一分散の検定)。

13章 この章では誤差項に自己相関があるときの検定と推定を扱う。発展としてラグ付従属変数と誤差項の自己相関の問題も議論される:時系列分析(AR(1) 誤差項);OLS(遅れのある従属変数を含む OLS 推定、効率性);検定(DW 検定、他の検定法、遅れのある従属変数があるときの検定);GLS と MLE;FGLS など(AR(1) 誤差項と AR(2) 誤差項、遅れのある従属変数があるときの推定);共通因子;予測。

14章 パネル・データの一般的な手法と誤差項が不均一分散に従うときの頑健共分散推定が取り上げられる:固定効果(グループ効果の有意性検定、級内変動と級間変動、固定時間効果とグループ効果、非バランス・パネル);変量効果(GLS、FLGS、変量効果の検定、固定効果対変量効果の Hausman の検定、非バランス・パネルと変量効果);不均一分散と共分散の頑健推定(固定効果モデル、変量効果モデル);自己相関;動学的モデル。

15章 本章では時系列・クロスセクションのデータに回帰方程式群のモデルを適用する:時系列・クロスセクション・データの共分散構造(クロスセクションの分散不均一性、クロスセクション相関、自己相関);確率係数モデル;SUR モデル(GLS、FGLS、MLE、係数行列にゼロ部分行列が含まれるときの SUR のMLE、自己相関);特異な体系としての需要方程式体系;トランスログ費用関数;非線形体系と GMM 推定(GLS、MLE、GMM)。

16章 同時方程式モデルに関わる一般的な問題を取り上げる:同時方程式モデルの基本的問題点(内生性と因果性、線形同時方程式モデルの一般的記法、非線形方程式体系);識別性(階数条件と次数条件、標本情報によらない識別);単一方程式の推定(制限情報法 OLS、操作変数法と GMM):体系推定法(三段階最小二乗法、完全情報最尤法、GMM 推定);定式化の検定;動学的モデルの性質(動学的モデルと乗数、安定性、均衡への調整)。

17章 本章では遅れをもつ変数を含む回帰モデル一般を扱う:分布ラグモデル(ラグ効果、ラグ演算子、無制約有限分布ラグモデル、多項式分布ラグモデル、幾何級数ラグモデル:遅れのある従属変数);自己回帰分布ラグ(ARDL)モデル(推定、ラグ・ウェイトの計算、動学的モデルの安定性、予測);動学的モデル(誤差修正モデル、自己相関、定式化の分析、共通因子制約);多変量自己回帰(VAR) (Granger 因果性、インパルス応答関数、構造的 VAR、マイクロ経済学における VAR)。

18章 この章は近年の計量経済学の発展方向の一つである計量時系列解析を扱う:定常的確率過程(自己回帰移動平均 ARMA 過程、定常性と反転可能性、自己相関係数、偏自己相関係数、単一時系列モデルの推定(ARMA と ARMAX の非線形最小二乗推定);周波数領域;非定常過程と単位根(和分過程、ランダム・ウォーク、トレンドと見せかけの回帰、 単位根推定、長期記憶モデル、季節性);共和分(共通トレンド、誤差修正と VAR 表現、検定、推定);自己回帰条件付分散不均一 ARCH モデル(ARCH(1)、ARCH(Q) モデル、GARCH と平均 ARCH、疑似最尤推定、GARCH 効果の検定)。

19章 本章は高度な離散従属変数モデルまで最近の推定法を交えて説明している:離散的選択モデル;二値選択モデル(回帰的接近、指示関数と確率的効用モデル);二値選択モデルの推定と推測(共分散行列の頑健推定、限界効果、仮説検定、定式化の検定、適合度、比率データの分析);二値選択モデルの最近の動向(パネルデータの変量効果と固定効果モデル、セミパラ分析、最大スコアー推定量(MSCORE)、ノンパラ回帰関数の核推定量、セミパラ推定);二方程式プロビットと多方程式プロビット(最尤推定、拡張);多選択ロジットモデル(多項ロジットモデル、条件付ロジットモデル、無関係な選択肢からの独立性、入れ子ロジットモデル、正規分布に基づいた多項モデル);順序付けられたデータ;計数データ Count Data のモデル(適合度、関数形の特定化検定、過剰分散 Overdispersion の検定、異質性と負の二項分布モデル、パネル・データへのポアソンモデル、ハードル Hurdle モデルとゼロ可変 Zero--Altered ポアソンモデル、時系列データと計数データモデル)。

20章 最後の章では制限従属変数モデルを扱う。また持続時間データ、ハザード・モデル、長期固定観測データの処理も説明される:切断データ(切断分布、切断分布の積率、切断分布回帰モデル);検閲データ(検閲正規分布、トービット・モデル、推定、定式化についての問題点、計数モデルにおける検閲と切断);付随的 Incidental 切断(二変量分布における付随的切断、選択モデルにおける回帰、推定、処置効果、正規性の仮定、質的応答モデルにおける選択);持続期間データ(持続期間データ、持続期間のパラメトリックモデルへの回帰的接近、他の方法)。