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ブレイクスルー思考
日比野省三・日比野創 共著

本書の概要

1960年以前は、「十年一昔」という時代であった。十年たつと世の中が変わるという時代であった。当時は、長期計画も可能で、大型コンピュータを用いて、過去のデータを分析し、未来を予測することも可能であった。1970年代に入ると、オイルショックに振り回され、「五年一昔」となっていった。長期計画は、大変難しく、中期計画なら何とか可能であった。1980年代になると、時代の変化が、加速的にスピードをあげ、「二年一昔」になってしまった。去年のデータで、来年を考えることは出来ても、中期計画を立てることも不可能になってしまった。短期計画が、やっと可能という時代がやってきたのである。1990年代に入ると、この短期計画も出来ないほど、激しい変化に遭遇する時代に突入し、「六ヶ月一昔」の時代になってきた。「過去の延長線上に未来はない」時代が到来したのである。過去の常識が、非常識になってしまうという現象も、頻発して起こるようになってきた。過去の経験が、使えなくなってしまった時代でもある。
 「過去の延長線上に未来はない」現象は、我々人類にとって、新しい思考革命をもたらすものである。それは、何故か? 
 その理由は、様々考えられるが、本書は、次の3の崩壊現象に焦点を当てて、この思考革命の必要性を問うている。

1. 研究アプローチの崩壊
過去の延長線上に未来がないために、過去を研究し、現在を研究し、未来を研究することが危険であり、従来使われてきた「研究アプローチ」が、使用出来なくなってきた。

2. 押し出す思考(プッシュ型思考)の崩壊
従来人類が長い間、当然のように考えてきた「過去と現在から学び、未来を考える」過去から未来に押し出す思考が、「過去の延長線上に未来がない」時代を迎え、無力になってしまったのである。「過去と未来は、大きな違いがある」という事実は、過去の成功事例が、全く役立たないということである。事例研究が、使えなくなってしまったということは、ビジネススクールやコンサルタントにとって恐ろしいことである。

3. 従来の思考パラダイムの崩壊
分析、分断からスタートし、「部分から全体をみる」従来の思考の弊害が、大きくなってきた。分社化の弊害、縦割り行政の弊害、個人主義の弊害など、従来の思考による様々な壁ぶちあたり現象が、あらゆる分野で頻発してきている。様々な分野で、パラダイムシフト現象が、起こっているけれども、本書は、思考のパラダイムも、「過去の延長線上に未来がない」と主張し、「思考のパラダイムシフト論」を展開している。

 以上の3つに崩壊現象は、様々な分野に大きな影響を与え始めている。過去や現在の分析道具を教え、未来の戦略を考えることを教えてきたビジネススクールは、大きな脅威に直面している。特にケーススタディを主体にビジネススクールを運営してきた関係機関は、この脅威に早く気付き、教育方法の転換が求められるのである。また、過去の分析、現状分析、現状調査をビジネスにしてきたコンサルタントも、今後大きな脅威にみまわれることになる。当然、これらのコンサルタントに指導されてきた企業も、大きな壁に斑あたることになると、本書は警告している。

 本書は、警告するのみならず、これらの脅威に対し答えを用意している。その答えは、ただ一つ…「思考を転換せよ」と言うことである。本書は、1990年にナドラー・日比野の提起した「思考パラダイムシフト論」を援用し、人類の思考パラダイムを転換すべきであると主張している。人類は、いま「思考パラダイム転換」の時期に直面していることを読者に分かりやすく説明している。16世紀の教会支配、即ち「神の思考」から、脱却して、人類は、真実を求め、事実を基に考える思考(デカルト思考)に転換してきた。激しい変化のために、過去や現実を基に思考することが、出来なくなった「過去の延長線上に未来がない」時代に直面した人類は、再び思考のパラダイムを転換しなければならない時代を迎えたのである。この意味から、現代人は、大きな転換期に生きているのである。

 それでは、「どちらからどちらへ思考パラダイムを転換するか?」ということである。本書の主張は、過去や現在を基に物事が考えられなくなったなら、もう一度根源に戻り、「何のため?」「どうあるべきか?」と考え、未来を明確にデザインして、未来から学べと主張している。これを本書では、「デザインアプローチ」と呼んでいる。「研究アプローチ」が、使えないなら、「デザインアプローチ」を使おうと、主張しているのである。
このデザインアプローチの根底にある思考パラダイムを、「ブレイクスルー思考」と呼び、本書は、新しい思考パラダイムとして、「ブレイクスルー思考」に言及している。

 「ブレイクスルー思考」は、1990年ナドラー・日比野が世界で初めて提起した新しい思考パラダイムで、現在世界中で多くの企業や行政で使われ、大きな成果を産み出している。哲学から道具まで整ったひとつの世界を構築し、奥の深い思考パラダイムである。
認識論として、システム観を採用し、「そもそも何だ!!」と本質・根源を追求するために、目的の目的を追求する目的展開をいう道具を用いることろが、ユニークである。ブレイクスルー思考は、従来の分析し、真実を求める「デカルト思考」と違い、統合し解決策を求める思考であり、「全体から部分」をみる思考である。
 最後、「思考革命にチャッレンジするものが、21世紀を支配するものである」との本書のメッセージを、人類は真剣に受け止めなければならない。

本書の目次

第一章 フライパン蛙
激しい変化の時代は、フライパン蛙の時代である。

第二章 過去の延長線上に未来はない。
    激しい変化により、過去のデータで未来が語れない。

第三章  ビジネススクールの危機
「過去の延長線上に未来がない」時代に、ビジネススクールは生き残れるか?

第四章  コンサルタントの危機
「過去の延長線上に未来がない」時代に、コンサルタントは生き残れるか?

第五章  経済学の危機
「過去の延長線上に未来がない」時代に、経済学はどうなるか?

第六章  研究アプローチからデザインアプローチへ
 アプローチを変えよう

第七章  思考のパラダイムシフト論
 思考パラダイムも転換する。神の思考から、デカルト思考へ、デカルト思考から、ブレイクスルー思考へ

第八章  ブレイクスルー思考とは
 7つの仮説と展開統合思考

第九章  ブレイクスルー思考の素晴らしさ

第十章 未来へ

本書の特徴

1. 本書は、従来の「研究アプローチ」、「プッシュ型思考」の危機を指摘した著書である。
2. 本書は、「思考パラダイムの転換」の必要性を主張した著書である
3. 本書は、ビジネススクールやコンサルタント、コンサルタントを使っている企業や行政の人々に警告する著書でもある。
4. 本書は、警告するのみならず、新しい思考パラダイムであるブレイクスルー思考の紹介もしている。
5. 本書は、ブレイクスルー思考の威力についても語り、新しい世界へのガイドとして役立つように書かれている。
6. 本書は、難しい理論を誰でも分かるように、事例を用いて書かれている。