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テレコム産業における競争

ジャン・ティロール著
上野有子訳

A5判/352頁
本体価格4,800円

ISBN4-87315-243-7


(本書について)
 本書は原則として,規制産業の中でも特に電気通信(テレコム)産業を取り上げて分析している。分析の趣旨は,経済理論と規制政策の接点を見出し,経済理論を現実の政策決定に反映させるよう試みることにある。このため,本書で展開される分析結果やそれに基づく政策へのインプリケーションは,多くの場合他の規制産業にも適用できるものである。特に,従来経済的規制と称される,自然独占性を根拠として規制の対象とされてきた一連の産業(電力・ガス・郵便・鉄道など,巨額のネットワーク設備への投資とその維持が必要な産業)には,全く同じ考え方が当てはまる場合が多い。したがって,本書の意義は,いわゆるネットワーク産業における近年の規制改革及び,結果としての競争状態の分析にあると考えることができる。
 本書は,電気通信分野の専門家のみならず,幅広く規制政策担当者一般や,競争政策当局,及び大学生上級から大学院生,経済政策と直接・間接に関連するテーマを扱う研究者,さらには理論経済学者から必ずしも経済学や数学の専門知識を有していない一般の読者まで,様々な読者層を対象としている。


(本書の特長)
- ミクロ経済学理論及び産業組織論の分野で,極めて高名かつ卓越した業績を持つ著者達が,ネットワーク型産業一般の分析ではなく,あえて電気通信産業に焦点を絞って記述。精緻なモデル分析を行い,それを初心者にもわかりやすい表現で平易に説明している。
- 理論と現実の政策判断とのギャップを埋め,適正な政策判断を導き出す理論的アプローチに貫かれている。特に本書の中核である第2章から第6章までは必読。
- 大部分の章で述べられる理論的検討の成果は,長年にわたって当分野の中心的なテーマであり,基本的な問題はすべて,本書の範囲内か若干の応用の域にあると思われる。
- 規制改革の評価を行う際に理論的評価に限定し実証的評価を行っていない。理論が紹介される際には,それらの持つ政策的なインプリケーションがわかりやすくまとめられている。
- 教育,研究,経済政策の立案・策定の分野で極めて重要な貢献が可能。
- 理論的に高度な部分をボックス形式で整理することで,読者の必要に応じて読むべき範囲を選択できるように工夫されている。


(本書の構成)
 本書は全7章より構成される。第1章は導入であり,電気通信産業になじみのない読者を対象に,電気通信に関する技術革新と規制改革に関するバックグラウンドとなる知識を提供している。電気通信産業における技術革新において,規制改革と競争導入への方向付け,という最終的な目標に到達するために理解しておくべきポイントを,歴史的な側面と多様な国に関する横断的な側面の双方から簡潔に整理した。第2章から第6章では,近年の規制改革において中心となる4つのトピックを順に扱っている。最初のトピックであるインセンティブ規制については,とりわけ規制の代表例であり,すでに導入が試みられているプライスキャップ規制を中心に,その是非について第2章で整理されている。第2のトピックは片方向のアクセスであり,ネットワークを保有する独占事業者に対し,他の補完的なサービスを供給する事業者が支払うアクセス料金(アクセスチャージ)の設定について経済学的に分析した場合の結論と,それのもつ直感的なインプリケーションが検討されている。こうしたアクセスチャージについては,ネットワークを保有する事業者,アクセスを求める事業者及び最終消費者の関係をどのように把握するかによって,料率の設定についての考え方も異なってくる。第4章ではこうした考え方のうち,主要なものについて検討される。第5章では,第3のトピックとして,双方向のアクセス問題が論じられる。複数のネットワークが並立する状況が出現した際に,どのような考え方で接続すれば効率的か,料金設定の問題を中心に論じている。最後のトピックは,ユニバーサルサービスの問題である。近年,産業界への競争原理の積極的導入によってユニバーサルサービス提供の履行が困難になりつつあるとともに,規制当局はユニバーサルサービスを今後も何らかの形で維持すべきか否かの検討をせまられている。第6章ではこうした問題を解く際に必要となる考え方や,ユニバーサルサービスの維持と競争原理導入の両立が理論的に可能かどうかを検討していく。第7章は補論的な位置付けで,それまで触れてこなかったインターネットに関する議論や,今後の規制組織のあり方などについて整理している。


(もくじ)
第1章 舞台のセット
 導入/電気通信産業に関する簡単な予備知識/規制改革
第2章 インセンティブ規制
 経済原理:パフォーマンスベースの規制/経済原理:消費者サービスの価格設定/実践的な観点
第3章 エッセンシャル・ファシリティー(基盤設備)と片方向のアクセス:理論
 背景/経済原理/理論の緻密化:手段の不在と接続料金のための複数目標/ラムゼイ・アクセス料金体系に関する2つの特別な懸念といくつかの共通の誤解
第4章 エッセンシャル・ファシリティーと片方向のアクセス:政策
 アクセスポリシー設計のための一般的論点/バックワードルッキング・コストベースのアクセス料設定/規制部門と規制緩和部門:相互補助問題/フォワードルッキング・コストベースのアクセス料設定/コストベースのアクセス料設定と排除/ECPRとその応用/グローバル・プライスキャップ規制/グローバル・プライスキャップと排除のインセンティブ
第5章 複数のボトルネックと双方向のアクセス
 背景/非協調的なアクセス料金設定の非効率性/卸売段階の協定は小売段階の共謀を促進するか?パテントプールのアナロジー/電気通信における双方向のアクセス料金設定への応用/高いアクセス料金がなぜ共謀を円滑にしない可能性があるか,4つの理由/アンバンドリングと設備ベースの参入/代替的政策
第6章 ユニバーサルサービス
 新たなパラダイムの必要性/ユニバーサルサービスの基礎/アメリカ1996年電気通信法とユニバーサルサービス提供義務/ユニバーサルサービス・オークション
第7章 結論
 インターネットとインターネット通話/規制組織